2022年ついにサッカー界に新たな転換期を迎える。試験を通さずに登録するだけで選手、クラブと契約することが出来た「仲介人制度」が廃止され、サッカーエージェントの「ライセンス制度」の再導入である。しかし、ただ復活させるだけでなく、FIFAが徹底的に管理する「クリアリングハウス」システムについて検討されていることで各エージェントから批判が相次いでいる。
これはサッカー界において、かなり影響ある出来事なので今回は様々な情報サイトをかき集め、ちょっとだけまとめてみた。
経緯
過去を遡ること、2011年ベルギーの首都ブリュッセルで会議で当時FIFA法務部長だ「Marco Villiger」は全世界の選手移籍が25~30%のみが認可されたエージェントによって管理されていることに懸念していることを表明。
それを受けて2015年にFIFAが仲介人との協力に関する規則を介してサッカーエージェント業界の規制緩和を狙った「仲介人制度」を規定。これまでのライセンス制度を廃止、エージェントが満たす為の一連の最低基準を制定。これらの取り締まりはFIFAではなく、各国サッカー協会に委任することとなった。
このような流れで仲介人制度が開始され、サッカーエージェントの数は増加する一方で各国の協会はFIFAが提示した規則を一貫して実施せず、審査基準等が異なる結果となった。
またエージェントに支払う手数料が急上昇し、イングランド”プレミアリーグ”2019年の総報酬は15年の2億6300万ポンドを超えた。因みに日本のJクラブ側がエージェントに支払った総額は15年度”2億7千万円”に対して19年には3倍にあたる”6億2千万円”と約2倍と跳ね上がっている。
FIFA最高法務責任者である「Emilio García Silvero」は
エージェントの規制緩和は間違いだった
とコメントし、15年に廃止されたライセンス制度の再導入を示唆した。
具体的にはFIFAが実施する試験を受けて合格しなければエージェント資格を取得することが出来ないことは勿論、支払い金額も選手からの報酬を3%、違約金絡みの移籍に対しては10%に制限することが盛り込まれている。仲介人制度にも支払い金額を”目安”としていたが今回からは”厳守“としている。
さらに各国全ての支払いをFIFAのクリアリングハウスに通すことを検討。それは移籍に関する情報全てをFIFAが管理することを目的としている。FIFAは120国以上の14000に相当する取引がリングハウスを通して、年間約4億ドルの支払いがあると見積もっているという。
これらの公式声明からサッカーエージェントの反対を受けても、ライセンス制度を実施すると決意表明し、Garcia Silveroは次のように語っている。
私たちは彼ら(エージェント)たちと協力したいと思っている。彼らはサッカーにおいて非常に重要な役割を果たしています。
警鐘を鳴らすもの、反対するもの
そんな歩みをエージェント達はどんな見解を持っているのか?元ドイツ代表「メスト・エジル」をクライアントとして担当している国際弁護士「Erkut Söğüt」はトップレベルよりも、これからエージェント界に参入する者たちや下位クラブ中心に活動しているエージェントに多大な影響があるのではないかと語っている。
Erkutのような影響力の強いエージェントの場合、仲介人制度による平均的手数料がFIFAの上限(3%)を僅か2.8%上回っているに対し、下位エージェントだと平均16.3%と大きく差が生まれている。仮にライセンス制度が施行され、3%の限定されると収入は激減する明らかだ。イングランドリーグ1部から4部を比較するとより鮮明になる。
- プレミアリーグはエージェントに2億7200万ポンドを支払い
- チャンピオンシップはエージェントに4000万ポンドを支払い
- リーグ1はエージェントに300万ポンドを支払い
- リーグ2はエージェントに100万ポンドを支払い
特に2部、3部の選手を扱うエージェントの殆どが約16%の手数料をクラブから受け取っていると想定すると、これ以下のリーグだとさらに数値は低くなる。Erkut氏は
これよりもさらに13%も減少すればエージェントとして生き残れる可能性は無理だろう
と示唆している。
一方、マンチェスターユナイテッド「ポール・ポグバ」やスウェーデン代表「ズラタン・イブラヒモビッチ」といった選手をクライアントとして抱えている世界的に有名なエージェント「ミノ ライオラ(Mino Raiola)」は、ライセンス制度に対して
システム自体が間違っている、それは職業の知識がない人々によって発明されている。
と全面的に否定している。
彼は法外な手数料を相手先クラブに要求することで有名で過去に問題になり、19年にイタリアサッカー協会から、活動を3か月間禁止にされるほどだ。
今後の展望
2022年1月下旬ウルグアイのモンテビデオで2日間にわたって世界中のエージェント協会とFIFA関係者でフットボールエージェント規則(FFAR)草案に関する話し合いが行われた。
そこでいくつかの提案が出された。
・紛争に対処するためのエージェント会議所の設立
・ライセンスを持っていないエージェントと契約しているクライアントへの制裁の適用
・エージェントのワーキンググループの創立
などなど
この会議に参加していたFIFAのHead of Agentsを務めているポルトガル人「Luis Villas-Boas Pires」(チェルシー等で指揮していた有名な監督アンドレ ビアス ボアスの親類?)は
非常に前向きな対話をしてくれた参加エージェント協会に感謝したい
この草案、提案が今後、承認されれば早くて2022年後半に施行されるとのことだ。
またフランスサッカー協会(FFF)は既にライセンス制度に合わせて、試験導入についてHPで告知しており、登録は22年6月でエージェント試験は同年11月に行われるとある。
徐々ではあるが、各国エージェント試験導入に合わせて準備を進めていくと予想される。日本でも22年2月に仲介人規則が数年ぶりに改訂されている。
とはいえ、エージェント達はライセンス制度の穴をどうにかして探して出すだろう。
~~終わり~~
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